アルコール東大数学全完サークル

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知っておくと試験場で混乱しない!電磁誘導の別の解釈

 みなさんこんにちはアトマスです。

 今回は早稲田大学の入試問題で、

 

「あ、これ入試本番とか模試で出くわしたらあれ?これであってるのか?ってなって混乱する人多そうだな」

 

というような問題を見つけたので、自信を持って答えられるようになるための電磁誘導の話に関する知見を取り上げたいと思います。

 

 こちらが今回のテーマの問題です。

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 実際には問題はもう少し続きますが、今回のテーマではここまでで十分なので残りは割愛しましょう。

 

 さてこの問題。最初は2本の導線でできたレールに導体棒乗せて転がすという電磁誘導の分野では典型的な問題。

 

とりあえずファラデーの電磁誘導の法則より、導体棒に生じる誘導起電力は、レールと地面のなす角θを考慮して、(誘導起電力)=BLVcosθとすれば良さそう。

 

問題は次、導体棒が2本出てきた。1本目は最初と変わらず速度Vで動いてるようだけど、2本目は静かに離すとか言ってるし速度は刻々と変わってきそう。あれこういう場合誘導起電力ってどうなるの?閉回路2個あるし速度も一定じゃないし、導体棒1と導体棒2を含む閉回路とか誘導起電力どっちがどれくらいになるの?

 

一度こんな悩みを持ってしまって自分の完全に自信が持てなくなりドツボにはまってしまうこと、ありませんか?

 

「うわ、よく見るような問題なのになんか解けない...」

 

という状況ほど試験中に焦ることはありません。

 

こうならないためにも!電磁誘導では以下のような考え方を持っておくと、このような問題に出くわしても迷うことなく解いていくことができます

 

 物理だけでなく数学、ひいては日常においても、複数のことを同時に考えるのって混乱しやすいですよね。そういう全体を見ても複雑でよくわからないとき、みなさんはどうしますか?

 

1つ1つのパートに分けて、そのパートごとに整理していくとわかりやすくなるということを経験したことはないですか?実際力学でも、例えば2つの物体が重なっていて摩擦力を考えてなんて問題は、1つ1つの物体ごとにかかる力を図示して運動方程式を立てて、なんてことをするでしょう。

 

そのような知恵を我々は知っているので、今回もまずは1つの導体棒に注目することにしてみます。

 

 さて、問3は導体棒に流れる電流にかかる力を求める問題でした。もちろん電流とは電荷の流れであり、その大きさは単位時間にその導線の断面を通過する電荷量で定義されていたので、当然ローレンツ力を受けるわけですね。磁場とは、「運動している電荷に力(ローレンツ力)を及ぼす空間」なので、当たり前ですね。

 

ではここで今一度考えてみましょう。確かに電荷は電流の流れる方向に流れますが、他の方向にも流れていませんか?自由電子は当然導体棒内にあるのだから、導体棒が動けば中の自由電子も一緒に動くので...

 

そうです、導体棒がレール上を移動している以上、導線に平行な方向にも電荷は動いています

 

簡単のために、レールと地面の傾きはないものとしてまず考えましょう。1つの自由電子(電荷-e)に着目すると、それにかかるローレンツ力は

 

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図の太線矢印の方向になり、その大きさはeVBとなるでしょう。

 

これにより導体棒の奥側にマイナスの殿下がたまり、手前側にプラスの電荷がたまるので、電場が生じます。

 

そうなると当然、この自由電子はさらに電場からも力を受けることになりますね。この電場の大きさをEとすれば、自由電子にかかる力は

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となるはずです。そしてこの電場の大きさEは、ローレンツ力とのつり合いから

 eE = eVB

   E = VB

となります。この導体棒の長さがLで与えられていれば、この導体棒に発生する電位差は BLVとなり、まさにこれが誘導起電力の正体なんです!

 

実際今回の問題に当てはめれば、B→Bcosθとなり、それを上のBLVに代入すれば、まさしく問1でファラデーの電磁誘導の法則から求めた誘導起電力の大きさと一致します。

 

つまり、今回のように回路が変化したことで生じる電磁誘導に関しては、その変化した部分の自由電子ローレンツ力を受け、回路内を移動したことから生じる電位差が誘導起電力になっていると解釈できるわけですね。実はこれが原因となって電流が流れたのでした!

 

そうなればあとは簡単。導体棒が1本でも2本でも変わりません。その瞬間での導体棒が動く速さが分かれば、その導体棒に生じる誘導起電力が迷いなくわかりますね。

 

問題の通り、導体棒2の速度がvの時、真上からこの回路を見ると

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 と、迷わずかけ、あとは電流を自分で設定してこの回路方程式を解けば問4は正解にたどり着けるので、この考え方を理解していれば導体棒が2本の時も、それ以上の場合でも迷うことなく誘導起電力を求めることができますね!

 

以上の話をまとめると、

 

・磁束密度はそのままに、回路の一部が移動することで電磁誘導が生じる現象では、中の電子の動きに着目する解釈の仕方もある。

 

・まず、レールが速度Vで奥の方に動く→磁場において、導体棒中の自由電子も導体棒と一緒に移動するので、ローレンツ力を受けて移動する→それにより電荷分布の偏りが生じて、電場発生→導体棒中で電位差が生じ、これが誘導起電力の正体である。

 

・この理論により、移動した自由電子はその移動によりさらに別の向きにローレンツ力を受け、これがいわゆる導体棒中に流れる電流が受ける力となる。

 

となります。いかがだったでしょうか。この記事が役に立ったと思った方は、ぜひブログやツイッターアカウント(@atomath_home)のフォローなどよろしくお願いします!